90 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:24:43.51 ID:88mOtjmX0
再開します~
その後はみんなでマッタリ話しながら
爺さんがアコギを持ってきて音を奏
で始めた
リビングにはピアノもあって、娘がピアノを弾き始めた
目の前に広がるあまりの「古き良き家庭」っぷりに
俺は驚きと、憧れと、とても不思議な気持ちだった

93 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:28:55.49 ID:88mOtjmX0
とても楽しそうに無邪気に、爺さんは
ギターを鳴らす
それを肴に楽しそうに酒を飲む旦那さんに奥さん
爺さんはチューリップやフォー・セインツと言った往年のミュージシャンの曲を好んで弾いた
みんな酒の影響もあって出来上がっていた
その時聴いた曲で俺も唯一よく知っているのは「青春の影」だけだった
みんなと一緒になって歌った
懐かしい気持ちと無邪気な気持ちでいっぱいだった

94 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:34:25.04 ID:88mOtjmX0
笑顔と懐かしい音楽で場が満ちていった
人生30年余を生きてきたが、こんな
家族には初めて出会った
暖かくて、幸せそのもののように思えた
今まで所帯を持つことに否定的だった俺も、この時ばかりは家族っていいものだと思った
その日は遅くまで爺さんの家にいた
忘れられない一日だったな、今となっては
終電に乗るためにみんなに凄い急かされたっけ
俺飲み過ぎてフラフラになっちゃってさw

96 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:36:52.72 ID:88mOtjmX0
俺はそれから、毎週とは言えないが

頻繁に碁会所に顔を出すようになった
仕事の状況によっては平日の夜も顔を出した
職場と家の往復だった毎日に、なんとなくだけど
ハリと楽しみができた気がした
「次はいつ碁会所に行こうか」
そう思える好きな事ができたことが何より嬉しかった

101 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:43:17.52 ID:88mOtjmX0
碁会所に通っている内に、

爺さんは決まって端のテーブルを確保して待ってくれているようになった
灰皿と煙草を準備していて、俺が着くとニコニコしながら
「コーヒー飲むかい?」って言ってコップを持ってきてくれた
完全に友達のような感覚だった
俺も爺さんが迎えてくれるのが嬉しくて
碁会所に通うのが楽しくなった
週末や休日には旦那さんや娘さんがいることもあって
他のお客さん含めみんなで囲碁に打ち込んだ

102 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:47:49.84 ID:88mOtjmX0
週末や休日の日には、
碁会所からそのまま爺さんに連れて行かれて
爺さんの家に行くのが恒例になっていた
「どうせろくな物食べてないんだろ?」
爺さんは決まってそう言って俺を連れて行ってくれた
碁会所に行かず、じかに爺さんの家に呼ばれて碁を打つこともあった
そうすると爺さんより奥さんが俺と打ちたがって、
爺さんは隣でNHKの囲碁トーナメントを見てる、といった感じだったw

103 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 00:51:59.79 ID:88mOtjmX0
たびたび訪れる俺を煙たがるどころか、
いつも本当に楽しそうに迎えてくれる家族だった
まるで俺をもてなすことを楽しんでいるかのような

爺さんの家は本当に楽しくて大好きだったな
そんなこんなしてるうちに、あっという間に夏になったんだよな
出会ったのが春だったから、本当にあっという間に感じた

104 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 01:02:21.42 ID:WwDngaZa0
なんて和むスレや(*´∀`*)

105 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 01:07:50.20 ID:X9N5R4wEO
30越えても、希望って見つかるんだな

106 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 01:14:33.81 ID:88mOtjmX0
夏になると、通っている碁会所で旅行が企画
されている話を耳にした
なんでも毎年行ってるものらしく
碁会所のお客さんを集めてみんなで伊豆に行き
そこで観光したり囲碁を打ったりマッタリ楽しむものということだった
俺は吉本ばななの「TUGUMI」を読んでから
一度は伊豆に行ってみたいと思ってたので、行こうかと考えていた
でもきっと周りは年齢層も違うし、悩んだな

109 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 01:47:40.20 ID:88mOtjmX0
でも通ってみて気づいたが
碁会所には案外若い人も多かった

同年代のリーマンから大学生の子まで
マスターさんの娘さんたち(大学生と高校生)もいて
そこまで閉鎖的なコミュニティでもなかった
爺さんの一家も伊豆旅行に行くというので
俺はそれにあわせて仕事の予定を調整した
何かのために休みを調整するなんて、もう何年もないことだったし
すげえウキウキしたなw

112 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 01:58:46.79 ID:88mOtjmX0
前日は久々に修学旅行に行くようなテンションだった

社員旅行に行っても荷物持ちで
上司の相手をするのにウンザリするのに
どうしてかこの旅行はとても楽しみだった
同じものを好きな人が集まっているからかな
こんな気持ちになることは二度とないと思ってたもんな
大学時代に行った夏祭りが最後の夏だと思ってたし
何歳になっても夏は来るんだなあって感じてた

113 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:01:43.24 ID:88mOtjmX0
バスに乗って、俺はカメラを首から下げてワクワクしてた

隣には旦那さんが座った
奥さんと娘さんと爺さんもいて
マスターの子どもさんたちもいたし、案外学生の人も多そうだった
とはいえお年寄りはやっぱ多くて
車内は和やかながらもなんとも言えない雰囲気だったw

114 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:07:00.12 ID:88mOtjmX0
何時間か車に乗ると海沿いの道に出て、旅行って気がしてきた
いい感じの旅館(民宿?)に着くと、学生に混ざって俺は率先して荷物持ちになった
やっぱりお年寄りが多いしこういうとこで若いもんが頑
張らないとなw
部屋は、奥さんと爺さん 旦那さんと娘さんが一緒で
俺は碁会所で顔見知り程度だった大学生の男の子と一緒になった
あまり知らない若い人と一緒って少し身構えたけど
旅行のテンションもあったしその時はあまり気にならなかったな

115 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:12:41.77 ID:88mOtjmX0
午後からはしばらく各自自由な時間になり
俺は大学生君と海に行くことにした

爺さんたちはと言うと、宿でマッタリしたいとのことだったw
やはり長距離移動はなかなか体力をもってかれるからな
俺は柄にもなくテンションが上がってて、はしゃいで大学生を海に引き連れた
クソ暑くて、泳ぐでもなくカメラを抱えて裸足で浜をフラフラした

116 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:15:17.41 ID:88mOtjmX0
俺は色々と思う所があって、大学生に色々とはなしかけた

俺「ここTUGUMIの舞台なんだよね。知ってる?」
大学生君「あ、知ってますw俺もあれめっちゃ好きなんすw」
この大学生、妙に話が合う子で一緒にいて面白かった
まだ若いのにしっかりしてて気が利く人で
偉そうで申し訳ないけど、よくできたヤツだなあ~って思ってた

118 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:23:22.34 ID:88mOtjmX0
そのあと、宿に戻ると夕飯まで対局タイムとなった
広間みたいなとこ借りて、板碁盤を何枚も広げる
ますます修学旅行っぽさが増した
大の大人たちが畳に板碁盤ひろげて笑いながら碁を打ってんだ
見てるだけウキウキして恥ずかしい気持ちになってくるw
俺は色んな人と打った
大学生君、見知らぬじいちゃん、マスターの娘さん…
みんな一様に囲碁が好きで
打った後の検討とか楽しかったなあ

119 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:27:19.80 ID:88mOtjmX0
俺はカメラ係の役も担っていて
旅行後に写真を編集してDVD作ったりしようと
考えてたから
みんなのいい表情を捉えるのにも必死だった
だからこそだろうな、今でもあの楽しい雰囲気をよく覚えてるよ
爺ちゃん同士が談笑してたり、若い女の子と婆ちゃんが楽しそうに打ってたり
俺は色んな瞬間をカメラに収めようとしてた
まあ、もともと写真が好きだったしなw

120 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:32:07.04 ID:88mOtjmX0
その後は皆で大浴場に風呂へ
俺は爺さんの背中を流してあげた
何年ぶりだったろうな、人の背中を流すなんて
その背中がすごく大きなものに感じたよ
色々寂しい気持ちにもなった
そのあとは夕飯。
何を食べたかもう良く覚えてないんだけどw
とても美味い酒と飯を食べたってことは記憶してるw

122 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:37:18.26 ID:88mOtjmX0
夕飯からそのまま宴会場みたいなとこで
皆で酒を囲んでワイワイやってた
俺は爺さんや旦那さん、大学生君と一緒に飲んでた
日本酒を次から次へと口に運んで
俺はすっかり出きあがってたw
爺さんとフォークソングについて熱く語った
9時を過ぎた辺りから宴会場からも人が減り
俺たちもそろそろ部屋戻ろっかーって雰囲気になった
でもこの日の夜はここからが長かったな

123 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 02:46:30.27 ID:88mOtjmX0
部屋に戻ると、大学生君が勢い良く話しかけてきた
「力を貸してくれませんか…?」

一体なんのことだ?と思った
よくよく話を聞いてみると、この大学生君
マスターの娘さんに想いを寄せているんだそうなw
すっげえ面白くてむず痒くて、俺は一気にテンションが上がった
「マジか!?」なんつって声を上げて
俺も一気に若返った気がしたw

124 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 03:06:53.82 ID:X9N5R4wEO
イイネーイイネー

127 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:17:33.27 ID:88mOtjmX0
なんとなくテンションが上がっていたたまれなくなった俺達は
とりあえず宿の外にでて散歩でもするかってことになった
「飲み足りないね~」なんつって、コンビニへ
缶ビールを飲みながら歩いて宿に戻りながらも俺らのテンションは変だったw
「確かにな~いい子だもんな~」
なんて俺がニヤニヤしながら突っ込むと
大学生君は恥ずかしそうに
「そなんす…もうすごい好きで…」
みたいに嬉しそうに言ってた
全てが瑞々しくて羨ましいなあと思った

128 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:22:27.22 ID:88mOtjmX0
宿に戻ると、玄関脇でじいさんが一人でパイプ
をふかしてた
「お、夜遊びかい?若者たちよ」
なんて言われた
俺は面白くなって事のいきさつを爺さんに話した
すると爺さんは嬉しそうに笑って
「そういうことか、頑張れよ~」と楽しそうに言った
爺さんも愛嬌に溢れていて
「これからあの娘の部屋に行こうか」なんて言い出したw
すると大学生君は全力で拒んで、「明日!明日!」
って必死になってたなw

129 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:26:23.93 ID:88mOtjmX0
その後は三人で外で星を見ながら
買ってきた缶ビールをマッタリ飲んでたな
まさに、星見酒って感じだ
最高だったなあ。
一回り世代が違う男が三人。
爺さんは奥さんとの馴れ初めを無邪気に語り
大学生君は顔を真っ赤にしてマスターの娘さんへの想いを語り
俺は大学時代最後に行った夏祭りの事を話したなあ
それが最後の夏になると思ったのに、こうして今また夏を堪能してることを噛み締めてた

131 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:43:46.65 ID:88mOtjmX0
そうこうしてると、華のある声がした
「こんなところでなにしてるんですか」
そこにいたのはマスターの娘さんだった

といっても大学生君の好きなお姉ちゃんの方ではなく
妹の高校生の方だった
俺はしめた、と思ってニヤニヤして
「お姉ちゃん呼んでこれる?」って言った
そしたら大学生君がやたらてんぱってたな

132 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:47:55.54 ID:88mOtjmX0
大学生君は本当に焦ったのか、「お腹痛い」
って言って部屋に帰ってしまった
お前のために機転をきかせたのに!
マスターの娘さん二人が来た時は、そこには俺と爺さんしかいなかった
なんとも不思議な構図だよw
爺さんと30のオッサンと大学生と高校生w
およそ普段生きてる日常では考えられない状況だったな

133 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:52:50.58 ID:88mOtjmX0
娘さん二人はすごい美人、ってわけではないけど
可愛らしくて、今時めずらしい落ち着いててて素直な子たちだった
そのまま話してたんだけど、お姉ちゃんの方は酔ってたこともあって饒舌だった
俺が昔の恋バナをしてみせると、彼女も恋の話をし始めた
爺さんは笑って静かにビールを飲んでたな

134 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 03:58:26.82 ID:88mOtjmX0
でも彼女の口から出たのは苦い一言だったなぁ
「大学に好きな先輩がいる、振り向いて欲しい」
うん…大学生君には申し訳ないけど、なんというか青春の甘酸っぱさを感じたよ
その瞬間、すごくいたたまれなくなった
好きな人のことを語る彼女はとても嬉しそうで可愛かったし
でも大学生君の想いも知っていたし
まさかこの歳にしてこんな想いができるとはねw
高校生にでも戻った気分だったよ

136 :1 ◆yT5YRa9V0k :2012/04/21(土) 04:02:19.53 ID:88mOtjmX0
その後、娘さん二人は眠くなって部屋に戻って
また爺さんと二人きりになったんだけど
この話どうします…?w
ってコソコソ話して、爺さんは終始笑ってた
「あとは彼らを見守るだけだよ。若いってのはいいね」
って嬉しそうに言ってた
俺もそう思ってた
若いっていいな、俺もまだまだ色んなことできそうだって思えた

144 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 06:00:54.08 ID:RZLwhz0bO
たまにホワッとこんなスレが立ち上がるから+に来るのを止められない

147 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 08:42:19.96 ID:EmR4lHrl0
こういう経験に嫉妬してしまう俺ってちっさいよな

148 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 09:05:59.66 ID:hRq9Zg+H0
>147
同じところに止まらず新しい世界に飛び込む少しの勇気がドラマを産むのかなぁ。なかなか踏み出すことは難しいけれど。

154 :名も無き被検体774号+:2012/04/21(土) 13:26:14.96 ID:L+Lke5z60
こういう出会いもあるんだなってしみじみ思う
俺もたまには家から出てみるか